歯周病の人が矯正治療を受けるメリットとリスク

近年では裏側矯正やマウスピース矯正の誕生で、大人の矯正治療の人気も高くなっています。

大人の矯正では年齢の制限がない一方で、歯周病が問題になります。

 

なぜなら歯周病を理由に治療を断られることも珍しくないからです。

では、歯周病になると矯正治療が受けられないかといえば、答えは「NO」。

歯周病の人でも適切な治療を行えば、歯並びを改善することができます。

 

ただし、歯周病の人が矯正治療をするには、様々なハードルが待ち受けていることも理解しておきましょう。

ここでは歯周病の人が矯正治療を受けるメリットとリスクについて、詳しく紹介していきます。

目次

1. 歯周病の人が矯正治療を受けるメリット

矯正治療は歯並びのデメリットを解消するだけでなく、歯周病の進行や再発を防いで良い効果をもたらします。その理由をさらに詳しく解説していきましょう。

1-1.歯並びが悪い=歯周病になりやすい

歯周病の原因となる歯周病菌は、酸素が少ない場所を好む性質があります。たとえば“歯と歯の間”や“歯と歯茎の間”など表からは見えない狭いすき間。このような場所はもともと空気(酸素)に触れにくく、歯周病菌にとっての格好の住みかとなります。凸凹した歯並びでは歯周病菌が好む狭いすき間が多くなり、歯ブラシがうまく当たらないので、通常よりも歯周病の発症や進行のリスクが高まります。

 

1-2.歯周病になる=歯並びが悪くなる

歯周病が進行すると「歯がぐらつく」といった症状が現れますが、これは歯周病によって歯を支える周囲の骨が破壊されてしまうためです。このように骨が失われた歯は、やがて噛む力が加わるだけでも動きやすくなります。その結果、歯と歯の間にすき間ができたり、前歯が”出っ歯“になったりなど、歯並びにも変化をもたらしてしまうのです。歯並びの変化によって口の衛生状態が悪化すると、歯周病の進行や再発にも影響を与えていきます。

 

さらに歯並びの変化によって噛み合わせのバランスが崩れると、歯に余分な力が加わるようになり、さらに歯周病の悪化を招いてしまいます。このように歯周病で歯並びが悪くなることは見た目の問題のみならず、歯周病の進行においても悪循環を繰り返す要因になります。

1-3.歯周病の人の矯正治療はメリット大

歯周病の人の矯正治療は「歯並び」と「歯周病」のいずれにも大きなメリットをもたらします。歯並びが整うと“見た目のストレス”から解放されることはもちろんのこと、口内の衛生状態が改善されて歯周病の発症や進行のリスクが抑えられます。また噛み合わせを正常に戻すことで歯や骨にかかる負担を軽減し、歯周病の改善をうながす効果も期待できます。

2.歯周病の人が矯正治療を受けるリスク

歯周病の人の矯正治療はメリットも大きい一方で、様々なリスクがあるのも理解しておく必要があります。歯周病の人の矯正治療については歯科医の中でも賛否が分かれますが、それは次のような治療によるリスクがあるからです。

2-1.歯周病が今よりも悪化する

歯周病の人が矯正治療を行うことで症状が悪化しないかが懸念されます。

矯正治療では歯に一定の力を加えることで、「歯根膜」という根っこと骨の間にある組織に軽い炎症を起こしながら、骨の破壊と修復を利用して歯を動かしていきます。健康な歯根膜であればこの炎症はすぐに回復しますが歯周病で、すでに歯根膜に炎症がある場合は、矯正治療によってその炎症がさらに悪化する恐れがあります。

また海外の研究では、歯周病で生じる歯周ポケット内にプラークや歯石が残ったまま矯正治療を行うと、矯正力によって歯周病菌の活動が活発になると報告されています。以上のことから、歯周病に対し何も処置をしないまま矯正治療を行うと、歯周病の病状の悪化が懸念されます。

2-2.歯並びが良くなったのに「抜歯」に至るケースも

矯正治療によって歯周病が悪化した場合、最悪なケースでは歯が残せないこともあります。しかし仮に矯正治療が順調に進んで歯並びがよくなった場合でも、その後、抜歯に至るケースも少なくありません。これは重度の歯周病によくあるケースですが、矯正治療で噛み合わせが正常に戻ったものの、本来の噛む力に歯が耐えられないのです。元々の歯周病の状態によっては抜歯になる可能性があることも、よく理解しておきましょう。

3.歯周病の人の矯正治療はどのように進められる?

では、歯周病の人の矯正治療がどのように進められるのかを詳しく解説していきます。

3-1.まずは歯周病の治療から

歯周病の人が矯正治療を受ける第一条件は、歯周病が適切に治療され、病状のコントロールも良好であることです。したがって矯正治療を始めるより、歯周病の治療を優先的に行います。歯周病治療は長くなると数カ月ほどの期間を要する場合もありますが、歯並びを治すには根気よく治療を続けることが大切です。

3-2.必要に応じて他の治療法を組み合わせる

歯周病の人の矯正治療では、歯並びの見た目がよくなっても他の機能が正常に働かないと判断した場合には、別の治療法を組み合わせることもあります。たとえば奥歯の歯並びが正常の位置に回復しても、噛む力に耐えられない場合は抜歯してインプラント治療で対処していきます。また治療後の”後戻り“が不安視されるケースでは、被せ物で歯をつなぎあわせる処置を行う場合もあります。

3-3.通常よりも徹底したプラークコントロールが必須

歯周病の人が矯正治療を行う場合は、通常よりも徹底したプラークコントロールが必要です。矯正治療中はブラケット装置に食べ物が挟まりやすく、歯ブラシも当てづらくなるため、普通の人でも口の中が不潔になりがちです。ましてや歯周病の人の場合は、プラークコントロールの不良がさらなる病状の悪化を招き、矯正治療が予定通りに進まなくなる恐れがあります。ご家庭でのケアはもちろんのこと、歯科医院の定期的なクリーニングを欠かさず行いましょう。

4.歯周病の人が矯正治療を受ける際の3つの心得

最後に、歯周病の人が矯正治療をのぞむ際の3つの心得を紹介します。

4-1.必ず歯周病の検査と治療を受けること

歯周病の検査については歯周病の有無にかかわらず、成人してから矯正治療を始める場合には必ず受けておくことをおすすめします。反対に歯周病に関する必要な検査や治療を行わずに、矯正治療を勧めてくる歯科医には要注意です。

 

先にも述べたように、歯周病を改善しないまま矯正治療を進めれば、歯並びがよくなるどころかトラブルに見舞われる可能性も否定できません。もし検査で歯周病が判明した場合は、必ず歯周病の治療を受けてから矯正治療にのぞみましょう。

 

4-2.治療中・治療後は普段以上に口のケアに力を入れること

矯正治療中は口が健康な人でも虫歯・歯周病になるリスクが上昇します。歯周病の人は病状の悪化が矯正治療の成果にも支障がでるので、普段以上に口のケアを念入りに行うことが重要です。また歯周病は再発しやすい病気でもあるため、治療後も徹底したセルフケアにくわえ、歯科医院でのメインテナンスも欠かさず受けましょう。

4-3強い意思を持って治療にのぞむこと

歯周病の人の矯正治療は、通常よりも長い治療期間が必要です。一般的に矯正治療にかかる期間は2年程度といわれていますが、歯周病の人はそれ以上、重度の歯周病の場合では通常の倍以上の期間がかかることもあります。生半可な気持ちで治療にのぞめば途中で挫折しまうだけでなく、中途半端な治療によって今よりも状況を悪化することになりかねません。

 

現在の歯周病の程度にもよりますが、矯正治療を行うにあたっては通常よりも時間や費用がかかることを念頭に、モチベーションの維持に努めましょう。

5.まとめ

歯周病の人が矯正治療を受ける場合には、様々なリスクが立ちはだかります。ただ今の歯並びや歯周病をそのままにしておくよりは、はるかにメリットが大きいのも事実です。矯正治療のメリットは「見た目がキレイになる」「食べ物が噛みやすくなる」などが一般的に広く知られています。それにくわえ、歯周病の人の場合は歯周病の進行を食い止め、自分の歯を温存できる可能性を高める利点があります。ぜひ本記事を参考に、矯正治療を検討してみましょう。

この記事が気に入ったら「評価」ボタンを押してください!

★★★★★

評価する