インプラント治療で起こりうる「トラブル11選」

インプラントは、「天然歯のように美しい」「硬いものでもしっかり噛める」といった特徴があることから、急速に普及しつつある歯科治療です。今現在、装着している入れ歯をインプラントに移行したい、という人も急増しています。そんな優れた面の多いインプラントですが、治療の前後でさまざまなトラブルが起こりうることも忘れてはいけません。ここではそんなインプラント治療で起こりうるトラブル未然に防ぐ方法を詳しく解説します。

目次

1 説明不足による金銭トラブル

インプラント治療では、金銭に関するトラブルが比較的多くなっています。治療前のカウンセリングの段階では、「インプラント1本10万円」と聞いていたのに、いざふたを開けてみたら治療費の総額が30万円となっていることもあります。これは歯科医師の説明不足による金銭トラブルといえます。

 

▼トラブルの防止策

 

治療費の提示を受けた段階で、その内訳をしつかりと確認することが大切です。インプラント治療は、カウンセリング、診査診断、インプラント手術、上部構造の製作費など、それぞれの治療プロセスでそれなり費用がかかるものです。ちなみに、「インプラント1本10万円」と謳っている場合は、インプラント手術の費用のみを指していることがほとんどです。

2 手術中の細菌感染

インプラント治療は、一般の歯科治療と比べると、体にかかる負担が大きくなります。とくに、人工歯根を埋め込む手術では、歯茎をメスで切り開いて、顎の骨にドリルで穴を開けます。その際、使用する器具の滅菌体制が不十分であったり、手術をする環境が不衛生であったりすると、細菌感染が起こります。人工歯根を埋入する手術で細菌感染が起こると、当然、インプラント治療自体が失敗に終わることとなります。

 

▼トラブルの防止策

滅菌・消毒体制がしっかり整った歯科医院を選びましょう。治療に使用する器具を専用の滅菌器にかけることはもちろんのこと、導入している設備が高水準であることが大切です。また、インプラント専用のオペ室が完備されていることもポイントです。仕切りがあって半個室状態のスペースでも、すぐ横で他の患者さんの治療を行っているような環境は、手術に適しているとはいえません。完全個室がベストといえます。

3 手術中の血管・神経の損傷

患者さんにとって、最も怖いのが手術中の大きなトラブルですね。とくに動脈を損傷するようなことがあると、命にかかわる事態へと発展します。実際、過去に「オトガイ下動脈」を損傷して、患者さんが死亡に至ったケースがあります。神経を損傷した場合は、手術後に感覚の麻痺などが残ることがあります。

 

▼トラブルの防止策

 

歯科用CTによる精密検査やコンピューター上でシミュレーションを実施することで、安全に手術を実施することが可能となります。とくにCT撮影では、血管や神経の位置を3次元的に把握できることから、術中の大量出血や術後の知覚麻痺といったトラブルを回避しやすくなります。

4 ドリルによるオーバーヒート

人工歯根であるインプラント体を埋め込む際には、顎の骨に穴を開けなければなりません。その時、ドリルによる切削操作を誤ると、顎の骨に過剰な熱が伝わりオーバーヒートを起こすことがあるのです。顎の骨にも生きた細胞が存在しているため、過剰な熱が伝わると死滅してしまいます。また、骨組織も変性を起こし、インプラント体との結合が成されなくなります。その結果、インプラント治療も失敗に終わることとなるのです。

 

▼トラブルの防止策

 

インプラント治療の実績が豊富な歯科医師に施術をお願いしましょう。インプラントは、知識や技術、経験などが必須といえる歯科治療ですので、経験の浅い歯科医師に任せると、オーバーヒートのようなトラブルが生じやすくなります。そこで目安となるのがインプラントオペの症例数です。単に数字だけを提示するのではなく、過去にどのような症例を経験してきたのか、画像なども用いてきちんと説明できる歯科医師が望ましいです。あるいは、認定医や専門医などの資格を有している場合も知識や技術が一定水準以上であることの目安となります。

5 インプラントを誤った位置に埋めてしまう

インプラントを埋入する位置や角度は、治療結果に大きく影響します。予定よりも斜めに埋入したり、数ミリ深く埋入したりすることで、さまざまな悪影響が生じます。最も危険なのは「上顎洞への穿孔」です。これはインプラント体がお口の上に存在している上顎洞(じょうがくどう)という空洞へと突き出してしまうことを意味します。その結果、インプラント体が固定されないだけではなく、上顎洞炎(じょうがくどうえん)という重篤な細菌感染を引き起こすこともあるのです。

 

▼トラブルの防止策

 

インプラント治療の設備等が整った歯科医院では、インプラント手術を行うに先立って「サージカルガイド」を作製します。これは事前に撮影したCTのデータとコンピューター上のシミュレーションに基づいて作られるマウスピースのようなものです。マウスピースには、インプラント体をどの角度からどの深さまで埋めれば良いのか記録されているので、大きなミスが生じることがなくなります。

6 上顎洞にインプラントが突き出てしまう

インプラント体の上顎洞への穿孔は、埋める位置を間違えること以外にも起こりえます。それは、顎の骨の厚みが足りない時です。歯科用CTによる精密な検査を行わず、経験などに頼ってインプラント体を埋入すると、このようなトラブルが起こることがあります。

 

▼トラブルの防止策

上の顎の骨の厚みが足りない時は、「上顎洞挙上術(じょうがくどうきょじょうじゅつ)」と呼ばれる治療を行うことでトラブルを回避します。不足している部分に自家骨や人工骨を設置して、十分な厚みになるまで待ちます。骨が十分造られたかどうかも確認することも含め、必ず歯科用CTによる診断は必要となってきます。

7 インプラント周囲炎

インプラントは、人工の歯冠と歯根から構成されているものなので、虫歯なることは絶対にありません。けれども、歯周病にかかるリスクは比較的高くなっています。「インプラント周囲粘膜炎」や「インプラント周囲炎」という特別な病名が存在しているのはそのためです。これらは一般的な「歯肉炎」や「歯周炎」とほぼ同じなのですが、原因となっている歯が天然歯ではなくインプラントであるという点に注意しなければなりません。インプラントは天然の歯根ほどしっかり顎骨と結合していないことから、歯周病にかかることで簡単に脱落してしまうのです。

 

▼トラブルの防止策

 

インプラント周囲炎を予防するためには、毎日のセルフケアに加え、定期的なプロフェッショナルケアも受ける必要があります。定期的に歯科医院を受診することで、インプラントのクリーニングを行っていきましょう。インプラント周囲に汚れが付きにくくなるブラッシング法も学ぶことができます。

8 スクリューが緩んでインプラントが不安定になる

インプラントの上部構造(被せ物)を固定する方法は「セメント固定式」と「スクリュー固定式」の2種類があります。セメント固定式は、一般的な被せ物と同じように人工を歯科用のセメントで固定します。一方、スクリュー固定式はその名の通りスクリュー(ネジ)で被せ物を固定します。スクリュー固定式は、被せ物の取り外しが簡単で、修理や点検も容易に行える半面、ネジが緩んでしまうことがあります。その結果、インプラントが不安定になり、「噛みにくい」などのトラブルを引き起こすようになります。

 

▼トラブルの防止策

 

インプラントのスクリューは、歯科医院でなければ調節することができません。不用意に力を加えると、被せ物が壊れるなどのトラブルが生じるため注意が必要です。インプラントのメンテナンスでは、スクリュー緩みなども細かくチェックしますので、被せ物の破折やインプラント体の故障なども起こりにくくなります。

9 人工歯が割れる・外れる

インプラントの人工歯の部分にあたる「上部構造」は、セラミックなどの材料で製作されます。見た目が美しく、耐久性も高いのですが、装着の状態が不適切だと割れたり、外れたりすることがあります。これは噛み合わせの調節が不十分だったり、人工歯と人工歯根を連結する「アバットメント」の締め付けがしっかりと行われていなかったりすることが原因です。

 

▼トラブルの防止策

 

噛み合わせが正常になるようなインプラントを設計することが何より大切です。これはインプラントを埋入する位置や角度などが重要となってくることから、精密な診査診断を行える歯科医師に治療をお願いするのが一番といえます。微妙な噛み合わせの異常などは、インプラント装着後の調整で改善することが可能です。アバットの締め付けに関しても、比較的容易に改善することができます。

10 マイナーなインプラントは転院することが難しい

インプラントシステムは、100種類以上存在しています。そのうち、日本でも認可がおりているメジャーなインプラントなら問題ないのですが、マイナーなインプラントの場合、引っ越しで他の歯医者に転院しても修理やメンテナンスを受けられなくなることがあります。なぜなら、インプラントの修理や点検には、それぞれ異なる器具が必要となるからです。そのため、引っ越しをしたあとも数時間かけて同じ歯科医院を通わなければならなくなるトラブルも発生しています。

 

▼トラブルの防止策

 

多くの歯科医院で取り扱っているメジャーなインプラント治療を選択することで、こうしたトラブルは回避できます。マイナーなインプラントは安いという大きなメリットがあるのですが、長い目で見るとデメリットの方が大きくなる場合も少なくありません。

11 インプラントが抜け落ちる

インプラント治療の中で最も深刻なトラブルといえば「インプラントの脱落」ですね。せっかくお金と時間をかけて埋め込んだインプラントがすっぽり抜け落ちてしまうのは、あまりにも大きな不利益といえます。このトラブルの原因は、大きく2つに分けられます。

11-1 歯科医師に原因があるケース

1つ目は、歯科医師の治療が不適切だった場合です。インプラントを埋入できるだけの骨量が存在していないのに、無理矢理手術を実施したり、埋入処置自体に問題があったりする場合、顎の骨と人工歯根が結合せず、インプラントの脱落へとつながります。あるいは、劣悪な材料を用いたり、重要な施術工程を省いたりすることでも、インプラント脱落のリスクは高まります。

11-2 患者に原因があるケース

インプラント治療後、セルフケアをしっかりと行っていないとインプラント周囲炎などの病気にかかってしまいます。インプラントの歯周病というのは、人工歯根を支えている骨を破壊することから、重症化することで「インプラントの脱落」というトラブルへと直結します。また、歯科医院が推奨しているにもかかわらず、定期的な検診を受けない場合もインプラントが抜け落ちる原因になるため注意が必要です。いずれも患者側に原因があるケースといえます。

 

▼トラブルの防止策

これらのトラブルは、治療技術や治療設備がしっかりした歯科医院を選び、患者さん自身がセルフケアとプロフェッショナルケアを両立させることで防止することが可能です。

12 まとめ

このように、インプラント治療には、様々なトラブルが起こりえます。
しかし、事前にそのトラブルを知り、行動することで、トラブルを避けることができます。
今回ご紹介した「トラブルの防止策」を参考に、より良いインプラント治療を選択するようにしましょう。

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