自費(保険外)の入れ歯VS保険の入れ歯

歯科治療では治療費の一部を支払う保険診療と、患者さんが費用の全額を支払う自費(保険外)診療の2種類があります。これは入れ歯治療にも当てはまり、入れ歯を作る際には保険内で作るか、あるいは自費で作るかを選択しなければなりません。

 

保険と自費の違いで一番わかりやすいのは費用面ですが、ただ「安い」という理由だけで保険の入れ歯を選んでしまうのはやや早計といえます。まずは保険の入れ歯と自費の入れ歯の違いをよく理解したうえで、現在のご自身に本当に合う入れ歯を探し求めていきましょう。

目次

1.保険と自費、決定的な違いは「材料」と「手間」

保険の入れ歯と自費の入れ歯で決定的に違うところは、入れ歯に使用できる“材料”入れ歯を作る際の“手間”のかけ方です。ではこの2つの点をもう少しわかりやすく解説していきましょう。

1-1.保険の入れ歯は使える材料が限られる

入れ歯は歯ぐきや粘膜を覆う土台(床:しょう)と、その上に並べる人工の歯、さらに部分入れ歯の場合は入れ歯本体を支える金具(クラスプ)で構成されます。

 

保険の入れ歯では土台と人工歯にプラスチック金具には金属が使用されますが、それ以外の材質は基本的に使うことができません。

 

一方の自費の入れ歯ではプラスチックや金属のほかに、やわらかい樹脂やシリコンなど、耐久性や品質に優れた材質からお口の状態に合わせて選ぶことができます。また歯型を取る材料も保険では制限がありますが、自費の入れ歯ではより精密に歯型を写しとる材料が使用できます。

1-2.自費の入れ歯は手間をかけて精密に作る

次に入れ歯を作る工程ですが、保険の入れ歯は基本的に①型取り②噛み合わせの確認③仮合わせ④入れ歯完成の4つのステップで進められます。

 

一方の自費の入れ歯では①の型取りや②の噛み合わせの確認に十分な時間をかけ、歯ぐきの形や噛み合わせの細かい部分まで丁寧に模型上に再現していきます。自費の入れ歯ではこのような手間をしっかりかけながら、精度の高い入れ歯を作っていきます。

2.さらに詳しく!保険の入れ歯と自費の入れ歯の違い

以上の点をふまえ、ここからは保険の入れ歯と自費の入れ歯の違いをさらに詳しく解説していきます。

2-1.費用:保険◎ 自費△

保険の入れ歯では患者さんの加入する保険や年齢に応じて、治療費の3割もしくは1割を患者さんが負担します。

 

一方の自費の入れ歯は費用の全額が患者さんの負担となります。その費用は選択する入れ歯の種類によって異なり、また同じ入れ歯でも治療を受ける歯科医院によって価格に大きな開きがあります。ただし自費の入れ歯については「※医療費控除」の対象となるため、申請を行えば実際に支払う治療費よりも少し安くなります。

 

※医療費控除

本人、またはその家族が1年間に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、納めた税金の一部が返還される制度。確定申告の際に申告が必要。

2-2.治療期間:保険〇 自費△

保険の入れ歯は最短で4~5回の通院(週1回)、期間にして1ヶ月から2か月以内で入れ歯を作ることができます。

 

自費の入れ歯は型取りや噛み合わせの確認などに時間をかけるため、入れ歯の大きさや種類によっては数カ月かかることもあります。

2-3.使用感(快適さ):保険△ 自費◎

保険の入れ歯は使用できる材料が決まっているため、入れ歯に精度や快適さを求めるにも限界があります。たとえば保険で使用するプラスチックは強度が劣るため、割れにくくするためにはある程度の厚みが必要となります。そのためお口の中に入れた時の違和感が強く、食べづらさや話しづらさを感じやすくなります。

 

一方の自費の入れ歯では薄くても強度のある材質を選ぶことで、このような入れ歯による不快感を抑えることができます。また型取りに時間をかける分、より精密に仕上がるためお口に入れた時のフィット感も良好です。

2-4.噛み心地:保険△ 自費〇

入れ歯全体がプラスチックで作られる保険の入れ歯は、自分の歯と比べると噛む力が1/5以下にまで落ちるといわれています。また噛んだ時に入れ歯が歯ぐきに当たって痛みを感じたり、入れ歯が動いてうまく噛めなかったりすることも多くなります。

 

噛む力が弱くなるのはある意味“入れ歯の宿命”ともいえ、自費の入れ歯といえども自身の歯と比べるとやはり噛む力は落ちてしまうことは否めません。

 

ただ自費の場合は歯ぐきにピッタリと合わせて入れ歯を動きにくくしたり、入れ歯の裏側を柔らかい材質に置き換えたりすることで、噛み心地を改善することは可能です。また近年はインプラントを併用した入れ歯(インプラントオーバーデンチャー)も誕生し、入れ歯でも維持力や噛む力を大きく回復できるようになっています。

 

2-5.見た目:保険△ 自費◎

保険の部分入れ歯では、お口に入れた時の見た目が劣ることが欠点の1つとなっています。これは部分入れ歯を支える金具(クラスプ)が原因で、とくに前方の歯に金具がかかると、お口を開けた時に金具が見えてしまい見栄えを悪くしてしまいます。

 

自費の入れ歯ではこの金具が見えないように入れ歯を設計できるほか、近年は部分入れ歯でも金具がない入れ歯(ノンクラスプデンチャー)も誕生しています。このような工夫によって、自費の入れ歯はお口に入れていても周囲の人に気づかれないほどにきれいに仕上げることができます。

2-6.入れ歯が壊れた時:保険〇 自費△

保険の入れ歯は費用が安いこと、比較的短期間で作れることにくわえ、入れ歯が壊れた時にすぐに修理ができるのもメリットの1つです。また入れ歯が歯ぐきの形に合わなくなった場合には、入れ歯の裏側のみを張りかえる修理もできます。

 

一方の自費の入れ歯は、材質や種類によって修理ができるものとできないものがあるため注意が必要です。ただ強度面でいえば、丈夫で品質の良い材質で作られる自費の入れ歯は、保険のプラスチックの入れ歯よりも頑丈で割れにくくなっています。そのため自費の入れ歯についてはよほど乱雑に扱わない限り、“入れ歯が壊れる”という心配は少ないでしょう。

3.“作り手の技術”が入れ歯の仕上がりを左右する

保険の入れ歯と自費の入れ歯にはそれぞれにメリット・デメリットがあります。ただ保険にしろ自費にしろ、その仕上がりをもっとも大きく左右するのは入れ歯の設計・製作にたずさわる歯科医や歯科技工士の技術です。

 

高い知識と技術を要した歯科医や歯科技工士の手にかかれば、たとえ保険の入れ歯であっても噛みやすく、不具合の少ない入れ歯に仕上がります。反対に作り手の技術が未熟だと入れ歯の仕上がりもイマイチなうえ、「痛い」「合わない」「噛みにくい」といった不具合も多くなります。とくに自費の入れ歯は高額な費用と長い時間をかけた分だけ患者さんの落胆も大きく、のちに大きなトラブルに発展することも少なくありません。

 

したがって新たに入れ歯を作る際は、「保険か自費か」を選ぶ前に、入れ歯に関する確かな技術を持つ歯科医を探すことが重要です。

4.保険の入れ歯と自費の入れ歯 選び方のポイント

最後に、保険の入れ歯と自費の入れ歯の選び方のポイントについてご紹介しましょう。

4-1.予算

保険の入れ歯と自費の入れ歯では、かかる費用に大きな開きがあります。そのため新たな入れ歯にどののぐらいまでの予算がかけられるか、よく検討しておくことが必要です。

 

自費の入れ歯は部分入れ歯で数万~10数万円総入れ歯では少なくても20万円以上の予算が見込まれます。ただ歯科医院によって価格は大きく異なるため、あらかじめ受診する歯科医院に問いあわせるか、ホームページ上に記載されている価格などを確認してみましょう。

4-2.お口の中に残っている歯の状態

部分入れ歯を新たに作る予定の方は、お口の中に残っている歯の状態をよく把握しておくことも大切です。具体的には「歯周病でグラグラしている歯はないか」「古い詰め物や被せ物はないか」「虫歯になりそうな歯はないか」といった点です。

 

たとえば入れ歯を作った後に「歯が抜けた」「被せ物が外れた」などのトラブルが起こっても、保険の入れ歯であれば土台を増やしたり、金具を付け替えたりする修理がある程度可能です。のちのちトラブルになりそうな歯があるが今は治療を希望しない、あるいは今はどうにもできないという場合には、保険の入れ歯を選択するほうが賢明といえます。

 

一方、自費の入れ歯は作った後に歯が抜けたり、歯の形が変わったりしてもそれに対応できない場合があるので注意してください。もし自費の入れ歯を検討するのであれば、数年以内にトラブルがおこらないよう、入れ歯を作る前にきちんと治療しておきましょう。

4-3.「初めて入れ歯を作る」という方は保険の入れ歯から

「入れ歯が初めて」という方の場合は、いきなり自費の入れ歯を作るよりも、まずは保険の入れ歯からはじめてみるほうが無難といえます。これは入れ歯とはどのようなものか、どんな感覚になるのかをあらかじめ知っておくためです。

 

残念ながら自費の入れ歯であっても、入れ歯特有の違和感や噛みにくさは“ゼロ”にはなりません。そのため自費の入れ歯の良さというのは、保険の入れ歯を使ってみないとわかりにくい点も多くあります。

 

それを覚悟のうえで自費の入れ歯を作るのも1つの選択ですが、まずは保険の入れ歯で使用感や取り扱い方を知っておくほうが、次のステップにスムーズに進みやすいでしょう。

5.まとめ

保険の入れ歯、自費の入れ歯それぞれに利点や欠点があり、どちらの方が適しているかは患者さんの予算や要望によって異なります。

 

ただどちらの入れ歯であっても、それを作る歯科医や歯科技工士の技術が仕上がりを大きく左右していきます。まずは入れ歯作りに信頼のおける歯科医院を探していきましょう。

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