歯周病になると口臭がきつくなるの??

日本歯科医師会が全国の男女1万人を対象におこなった意識調査では、およそ8割もの人が「自分の口臭が気になった経験がある」と答えています。しかし「口臭が気になった時に歯科医院を受診する」と答えた人はわずか9.4%と1割にも達していません。

口臭の中にはセルフケアや体調管理である程度コントロールできるものがある一方で、専門的な治療でないと改善できない口臭もあります。この後者にあたるのが、歯周病による口臭です。

口臭は歯周病の代表的な症状の1つであり、またその口臭は周囲の人を不快にさせるほど強いニオイを発することで知られています。今回は歯周病で口臭がきつくなる理由、さらにその治療法や予防法などについてご紹介していきたいと思います。

目次

1.口臭の原因の約9割は“お口の中”にある

1-1.口臭の正体は細菌が作る“ニオイ物質”

口臭の約9割はお口の中で発生した気体によるもので、その主成分は「嫌気性菌(けんぎせいきん)」という細菌が作り出す“ニオイ物質”です。

 

嫌気性菌はお口の中でも酸素の少ない場所に住みつき、食べかすなどに含まれるタンパク質を分解してさまざまなニオイ物質を作り出します。

 

たとえばニオイ物質で代表的な「硫化水素」いう物質は“腐った卵”のような強い刺激臭が特徴で、火山ガスなどにも含まれる有毒ガスとしても知られています。

 

口臭の原因となるニオイ物質にはほかにも、「メチルメルカプタン」「ジメチルサルファイド」などがあり、この2つは硫化水素よりもさらに強烈なニオイを発します。

1-2.口臭はすべての人のお口の中に存在する

残念なことに、ニオイ物質を作る嫌気性菌をお口の中からすべて取り除くことはできません。つまり口臭は誰のお口の中にも少なからず存在しているのです。

 

このような誰しもが持つ口臭を「生理的口臭」といい、主に「舌」の汚れの中に住みついた嫌気性菌が発生する硫化水素がニオイの元となっています。

 

ただ生理的口臭は常にニオイを発するわけでなく、1日を通したニオイのリズムがあります。またそのニオイも人を不快にさせるほど強いものではありません。

 

口臭で問題になるのは「病的口臭」と呼ばれる口臭で、周囲を巻き込むほどニオイが強く、また1日のリズムに関係なく常にニオイを発し続けるのが特徴です。

 

病的口臭は体の中に何らかの問題があり、その問題が解決しないかぎり口臭も改善されることはありません。そしてその問題で多くの割合を占めているのが「歯周病」です。

1-3.なぜ歯周病になると口臭がきつくなるのか

歯周病の症状といえば「歯ぐきが腫れる」「歯がグラグラする」などが一般的ですが、実は「口臭」も歯周病の代表的な症状の1つに挙げられます。

 

ではなぜ歯周病になると口臭がきつくなるかといえば、歯周病を引き起こす歯周病菌こそが嫌気性菌の“代表格”だからです。さらに歯周病菌は、硫化水素よりもニオイの強いメチルメルカプタンを大量につくる嫌気性菌としても知られています。

 

メチルメルカプタンは“玉ねぎが腐ったニオイ”と表現されるほどの刺激臭があり、周囲に強い不快感を与えます。実際に歯周病の人の息を調べるとメチルメルカプタンの濃度が高く、それが歯周病による口臭の特徴にもなっています。

2.歯周病の治療なくして口臭の改善はなし

2-1.歯周病は自分で治せない

病的口臭のニオイの元を断ち切るためには、まずその原因の根本を解決していく必要があります。歯周病による口臭も、その原因である歯周病を治さないことには口臭の改善は困難です。

 

ただ歯周病は一度かかると、自身で懸命に歯を磨いたり、歯周病に効く歯磨き剤を使ったりして治せる病気ではありません。歯周病による口臭をなくすためには、歯科医院での専門治療が不可欠です。

 

2-2.まずは歯の表面の汚れ(プラーク・歯石)を徹底除去

歯周病治療の基本は、お口の中の歯周病菌を可能な限り減らすことです。

 

歯周病菌は「プラーク」と呼ばれる細菌の塊や、プラークが硬くなった「歯石」の表面に多く住みついています。そこで歯周病の治療では、はじめに歯の表面に付着したプラークや歯石を徹底的に取り除いていきます。

 

2-3.深い歯周ポケットには「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」が必要

歯周病が進行すると、歯と歯ぐきのすき間に「歯周ポケット」という深い溝ができてしまいます。この狭い歯周ポケットは、酸素の少ない場所を好む歯周病菌にとっては非常に好都合な場所です。

 

一方で狭い歯周ポケットのすき間に入り込んだプラークや歯石は、通常のクリーニングの器材でだけで取り除くことができません。そこで歯周病治療では深い歯周ポケットに「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」という処置を行い、ポケット内のプラークや歯石を落としていきます。

 

2-4.重度の歯周病では“手術”を行う場合も

軽度~中等度の歯周病であれば、先のクリーニングやSRPである程度の改善がみられます。ただ重度(歯周ポケットの深さが6mm以上)の場合は、これらの処置のみで治らないケースもあります。そのようなケースには必要に応じて歯周外科治療(手術による治療)を行っていきます。

 

2-5.歯周病は再発しやすい

上記の治療で歯周病が治っても油断は禁物です。歯周病は一度治っても再発しやすい病気であるため、治療後も定期的なメンテナンス(歯周病のチェック・クリーニングなど)が必要となります。歯周病を繰り返さないためにも、定期的な通院による再発予防に努めましょう。

3.歯周病による口臭を予防するために

3-1.「歯と歯の間」「歯と歯ぐきのすき間」の汚れを落とす

歯周病や口臭の原因となる嫌気性菌は、歯と歯の間や歯と歯ぐきのすき間といった“酸素の届かない場所”に多く住みついています。そのため歯ブラシでの清掃にくわえて、デンタルフロスや歯間ブラシなどを使った清掃もしっかり行っていきましょう。

3-2.定期的に歯石を落とす

歯石はそれ自体が歯周病や口臭の原因にはなりませんが、デコボコした歯石の表面は、歯周病菌をはじめとする嫌気性菌の“格好の住みか”となります。

 

また歯の表面にこびりついた歯石は、歯ブラシなどによるセルフケアで取り除くことができません。したがって数カ月に1回は、歯科医院で歯石をきれいに落としてもらいましょう。

3-3.「バクテリアセラピー」という新たな予防法

歯周病や口臭の予防で近年注目を集めているのが、「バクテリアセラピー」という予防法です。

 

バクテリアセラピーとはお口の中によい働きをもたらす“善玉菌(プロバイオティクス)”を増やして、歯周病や口臭の原因となる“悪玉菌”の増殖を抑えようとする新しい予防医学の考え方です。近年は予防歯科にこのバクテリアセラピーを導入する歯科医院も増えてきています。

 

お口の善玉菌として有名なのは「L.ロイテリ菌」や「乳酸菌LS1株」などの乳酸菌です。お口のバクテリアセラピーではこれらの善玉菌を含むタブレットやガムを一日に数回を服用していきます。興味のある方は歯科医院に相談してみましょう。

4.自分の口臭は自分で気づけない

どれほど口臭が強くても「当の本人が気づいていない」ということはよくあります。これは鼻の“順応(じゅんのう)反応”という性質によるもので、たとえば他人の家のニオイは感じても自分の家のニオイは感じないのと同じ現象です。

 

鼻は同じニオイを長くかぎ続けると、そのニオイを感じなくなります。これが鼻の順応反応で、鼻がニオイに慣れてしまうとこのような現象がおこります。人と違う口臭があっても、それに自身が気づかないのもこのためです。

 

したがって「口臭がない」と自分では思っていても、実は知らないうちに周囲を不快にさせる口臭を発している可能性も否定はできません。とくに歯周病の初期の段階では、はっきりとした症状があらわれないことが多いため注意が必要です。

 

お口の中に以下のような自覚症状のある方は、歯周病の初期か軽度の歯周病の疑いがありますので、早めに歯科医院を受診しましょう。

 

□歯ぐきがむずがゆい

□歯を磨くと、歯ぐきから血が出る

□お口の中がいつも粘つく

□お口の中が乾きやすい

□歯と歯の間に食べ物がつまりやすい

□歯が長くなったような気がする

5.まとめ

歯周病による口臭は周囲の人を不快にさせる強いニオイを発生させます。その口臭は自身での改善が難しく、歯科医院での専門治療が必要です。

 

歯周病は進行すると自身の歯を失う原因になるほか、近年は心筋梗塞や脳梗塞、アルツハイマー病といった重篤な病気の引き金になることが指摘されています。歯周病の症状や口臭に思い当たる方は、早めに治療を受けましょう。

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