根管治療には「自費治療」と「保険治療」があります。その違いは??

歯科の自費治療といえば、セラミックによる審美治療や矯正治療、インプラント治療などが有名ですが、近年は根管治療を自費で行う歯科医院も増えています。

 

一般には「歯の神経を取る治療」「歯の根っこの治療」として知られる根管治療は、基本的に保険が適用でき、どの歯科医院でも一律の費用で治療が受けられます。その根管治療をあえて高額な「自費」で行う理由はどこにあるのか、疑問に思う方も少なくないでしょう。

 

そこで今回は根管治療における「保険」と「自費」の治療内容の違いや、自費による根管治療のメリットなどをご紹介していきたいと思います。

 

目次

1.「保険」と「自費」で根管治療はどう変わる?

保険でも自費でも、根管治療の大まかな流れにそれほど大きな違いはありません。ただ治療の各ステップで使用する機材や薬剤、費用などが保険と自費では異なります。まずは保険と自費で根管治療の内容にどのような違いがあるのか、具体的にみていきましょう。

1-1.検査

保険の根管治療では、一般的に問診(病気の経過や症状についての確認)視診(お口の状態を目で確認)レントゲン診査を行って病状を詳しく調べていきます。

 

自費の根管治療ではさらに上記の検査項目に加え、歯科用CTによる画像診査を行ないます。一方向からの画像を平面的にとらえるレントゲンとは異なり、歯科用CTはあらゆる方向から歯の根っこの状態や根管の様子をとらえ、それを立体画像として映しだします。

 

1-2.治療器具・機材

根管治療では「ファイル」と呼ばれる細い針のような器具を使用して、根管内の清掃や拡大を行います。保険治療では基本的にステンレス製のファイルを用いますが、自費治療ではステンレスよりも曲がりやすく折れにくいニッケルチタンファイルを使用するのが一般的です。

 

また根管治療を自費で行う歯科医院の多くは、治療に「マイクロスコ―プ」を導入しています。マイクロスコープとは医療用顕微鏡のことで、肉眼では見えにくい細かい部位を2~20倍にまで拡大できます。自費の根管治療はこのマイクロスコ―プの使用によって、従来よりも精密で確実な治療を実現しているところが最大の特長です。

 

ほかにも自費治療では根管内への細菌の侵入を防ぐ「ラバーダム」の装着が標準となっていますが、保険治療でラバーダムを使用する医院はそれほど多くありません。

 

※ラバーダム:患部に唾液や血液、細菌などが侵入しないように歯に装着するゴム製のマスク

 

1-3.治療に使用する材料や薬剤

歯科の保険治療では、使用する材料や薬剤の種類・濃度があらかじめ指定されており、それ以外の材料や薬剤を使用することは原則禁止されています。

 

一方の自費治療では、それぞれの歯科医院が最良と考える材料や薬剤を独自で選び、使用することができます。根管治療を自費で行う歯科医院では、治療の成功率が高い欧米諸国ではスタンダードとなっている材料や薬剤を積極的に取り入れています。

1-4.費用

保険の根管治療では3割負担の場合、1つの根管あたりにかかる費用は1,000~3,000円程度、奥歯1本(根管が3~4本)を治療しても1万円にも満たない費用で治療ができます。

 

一方の自費の根管治療については各歯科医院が独自で設定しており、受診する医院によって費用は異なります。大まかな相場は1つの根管あたり1万~数万円、1本の歯を治すのに10万~20万円程度です。

1-5.その他

保険治療は国内であればどの歯科医院でも同じ治療が受けられます。そのため引っ越しなどで治療が途中で終わった場合でも、転居先の歯科医院で治療を続けることが可能です。しかし自費治療の場合は歯科医院によって治療の方針や内容が異なるため、転院した場合に同様の治療が受けられない可能性もあるので注意しましょう。

2.保険が適応できる根管治療をあえて「自費」にする理由

保険が適応できる根管治療を、なぜあえて「自費」で行う必要があるのか。その理由として、現在の保険治療が抱える次のような問題点が挙げられます。

2-1.再発率が高い日本の根管治療

根管治療には初回に行う「抜髄治療(歯の神経を取る治療)」と、過去に神経を抜いた歯が再び悪くなって再治療を行う「感染根管治療」の2つの処置があります。

 

海外のデータでは初回の抜髄の成功率は90%以上と高い数値を示す一方、再治療(感染根管治療)については60~80%と初回よりも低い数値となっています。つまり根管治療は最初の“神経を取る治療”を確実に行うことが重要で、抜髄が不十分で“再治療”になると、次に治る確率は低くなってしまうわけです。

 

しかし日本おける根管治療の実態調査では、国内で1年間に行われた根管治療のうち、抜髄治療よりも感染根管治療の件数の方が多いことがわかっています。また他の調査でも国内における根管治療後の再発率は50~70%、つまり根管治療を受けた2人に1人は再治療が必要になることが示されています。

2-2.裏目にでる「治療費の安さ」

海外では8~9割の成功率といわれる根管治療の水準に、なぜ日本は及ばないのか。その理由の1つに、日本の歯科医療では根管治療に対する評価が非常に低いことが指摘されています。

 

保険であれば数千円で受けられる根管治療が自費では「1歯あたり10万円」と聞くと、あまりに高額な値段に驚く人も少なくありません。しかし海外の根管治療で「1歯10万円」というのは、それほど法外な値段だとはとらえられていないのです。そして日本の保険治療における「治療費の安さ」こそが、根管治療の再発率と深く関係しているといわれています。

 

例えば日本の根管治療の再発率が高い要因の1つに、「ラバーダムが使われていないこと」が指摘されています。海外の根管治療では必須となっているラバーダムがなぜ日本では普及しないかといえば、保険治療におけてラバーダムには何ら報酬が与えられないからです。ラバーダムは消耗品であるため、そこに費用が払われないことは歯科医院にとっても大きな損失となります。

 

また根管治療は他の歯科治療よりもはるかに難易度が高く、歯科医にはより高度な技術と繊細な作業が求められます。その一方で根管治療によって得られる報酬は非常に低いため、「治療に手間や時間をかけたくてもかけられない」というのが歯科医の本音のようです。

 

このように現行の医療制度ではラバーダム1つにしても「自費」で請求しない限り、世界の治療水準を満たすことができないのが日本の根管治療の実状です。根管治療の精度を海外の水準まで満たすには、今のところ「自費」という形で患者さんに費用を負担してもらうしか方法がありません。

 

3.根管治療を「自費」で受けるメリット

では実際に、根管治療を「保険」ではなく「自費」で受けるとどのようなメリットがあるのか、以下に詳しくみていきましょう。

3-1.高度な治療で予後が良好

根管治療を成功させるうえで重要となるのが、根管内の細菌を可能なかぎり「無菌」に近い状態にすることと、根管内に薬剤を緊密に詰めて新たな細菌の侵入を防ぐことです。

 

しかし根管は非常に細くて肉眼で確認できないうえ、途中で曲がっていたり、枝分かれしていたりとその形状も非常に複雑です。従来の治療ではこのような根管の中を歯科医の感覚だけを頼りに治療を行うため、治療の予後に大きな開きが出てしまいます。

 

自費の根管治療では「歯科用CT」や「マイクロスコ―プ」を活用することで、目では見えない根管の中を“可視化(見える化)”し、より精密で確実な治療を実現していきます。また自費の根管治療では殺菌作用の高い薬剤や、根管の壁に密着して外部からの感染を防ぐ薬剤などを使用しながら、根管内の「無菌化」を図っていきます。

 

このような海外と同レベルの自費治療はその成功率も高く、予後も良好な点が最大のメリットです。

3-2.治療期間が短縮できる

従来の根管治療は1回の治療時間が30分程度、それを数回にわけて行ないますが、自費治療では1回の治療に1時間程度の治療時間を設けるのが一般的です。1回の治療に長く時間をかけられる分、通院回数が少なく、治療期間が短縮されるケースも多くなります。

3-3.歯を温存できる可能性が高い

根管治療を行う歯の中には、内部にヒビが入っている、あるいは過去の治療の際に誤って根管に穴が吐空いてしまっているケースも少なくありません。保険治療の場合、このようなケースの多くが“抜歯”を余儀なくされます。

 

しかし高性能な機器や薬剤を使用する自費治療では、従来では“抜歯”となるような歯でも、治療によって温存できる可能性が高くなります。

 

また歯科用CTやマイクロスコ―プは、レントゲンや肉眼では見えない“小さなヒビ”も確認することが可能です。このようなヒビは早期に対処おくと、後にヒビが大きくなったり、歯が割れたりするのを未然に防ぐことができます。

4.まとめ

“歯の土台の治療”ともいわれる根管治療は、治療が成功するかどうかがその歯の寿命を大きく左右するといっても過言ではありません。自費の根管治療は高額な費用が治療のハードルを高くしていますが、“生涯に1本でも多くの歯を残す”という点においてはメリットが大きい治療といえます。

 

また抜歯を宣告された歯についても、場合によっては自費治療で温存できる可能性もあるため、気になる方は自費治療を行っている歯科医院に一度相談してみましょう。

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