「高血圧/妊娠中/心臓病/脳梗塞」であってもインプラント治療は可能ですか?

外科手術をともなうインプラント治療では、体の健康状態も重要になります。

そのため「持病があるからインプラント治療はできない」と思われる方も少なくありません。

 

ただ、すでに持病を持ちの方でも、病状が良好にコントロールされていればインプラント治療が可能となるケースも多いため、まずは主治医に確認してみることが大切です。

 

今回は「高血圧」「妊娠中」「心臓病」「脳梗塞」に焦点を当て、それぞれのケースでインプラント治療が可能かどうか、その目安をご紹介します。

目次

1.「高血圧」の方のインプラント治療

1-1.血圧のコントロールが良好であればOK

高血圧の方のインプラント治療では、降圧薬(血圧を下げる薬)などで血圧が良好にコントロールされていることがインプラント治療の条件となります。大まかな目安は収縮期血圧が160mmHg未満、拡張期血圧が100mmHg未満です。

 

また高血圧の治療を受けていなくても、健康診断等で「血圧が高め」という診断を受けたことのある方は、念のためその旨を担当歯科医に伝えておきましょう。

 

1-2.高血圧以外の持病をお持ちの方の場合

高血圧の方の中には、その原因となっている動脈硬化が進行し、脳や心臓、腎臓などに合併症をお持ちの方もいらっしゃいます。このような合併症をお持ちの方の場合、インプラント手術の際に血圧に大きな変動が生じると、持病を悪化させる恐れもあるため、主治医への相談が必要です。

1-3.治療を行う際の注意点

血圧が良好にコントロールされている場合でも、治療による不安や緊張、また麻酔薬の作用などによって平常時よりも血圧が上昇することが予想されます。

 

そのためインプラント手術では術前の血圧測定はもちろんのこと、術中もモニター等で血圧の変化を随時確認しながら治療を進めることが大切です。

 

手術中のストレス(痛み・不安感など)による血圧上昇を予防するために、静脈内鎮静法を併用した手術を行っている歯科医院もあります。気になる方はそのような医院を探してみるのもよいでしょう。

 

※静脈内鎮静法:痛みや不安感を取り除く鎮静薬を点滴し、リラックスした状態で治療を行う方法

 

2.「妊娠中」の方のインプラント治療

2-1.治療は「出産後」にはじめるのがベター

妊娠中の歯科治療については、いわゆる「安定期」といわれる妊娠中期(妊娠16週から28週)であれば通常の治療が受けらます。この時期であればレントゲンや麻酔、服薬などによる母胎への影響も心配ありません。

 

ただ外科処置をともなうインプラント治療については、基本的に妊娠中に治療を開始するのは控えたほうがよいでしょう。その理由として、インプラント治療は通常の治療よりレントゲン撮影(CT撮影)の回数が多いこと、また術後の感染や痛み、腫れなど母胎への負担が大きいことなどが挙げられます。

 

女性の方でインプラント治療を希望する場合は、妊娠前、もしくは出産後に治療をはじめることをおすすめします。

2-2.治療の途中で妊娠してしまったら?

インプラント治療をはじめたものの、治療の途中で妊娠が発覚した場合は、治療がどの程度進んでいるかによって、今後の治療方針を判断します。

 

すでにインプラント手術が終了しているケースでは、安定期まで治療を一時中断し、安定期に入ってから治療の続き(上部構造の製作・装着)を行います。

 

まだインプラント手術を行っていない(検査まで)ケースでは治療を一旦延期し、出産後に改めて治療のスケジュールを検討していきます。

 

3.「心臓病」の方のインプラント治療

3-1.心筋梗塞の既往のある方の場合

過去に心筋梗塞の発作の経験のある方の場合、発作から6か月以上が経過しているケースでは主治医の判断によりインプラント治療が行えます。その条件として、発症後も病状が良好にコントロールできていることや、後遺症が残っていないことなどが挙げられます。

 

ただ発症後に血液をサラサラにする薬(抗凝固剤・抗血小板薬)による抗血栓療法を受けている方では、薬の服用や手術中の止血に十分な配慮が必要です(後述の「抗血栓療法を受けている方の注意点」を参考)。

3-2.狭心症の既往がある方の場合

狭心症の持病がある方の場合、薬(ニトログリセリンなど)の服用で病状が良好にコントロールされていれば、インプラント治療を受けることができます。

 

ただインプラント手術中に血圧上昇や頻脈が生じると狭心症の発作を起こしやすくなるため、手術当日は狭心症の薬を持参しておくなどの備えが必要です。

4.「脳梗塞」の方のインプラント治療

4-1.“発症から6カ月以上経過していること”が条件

脳梗塞の既往がある方の場合、発症から6カ月以上が経ち、その後の経過も良好であれば、主治医の判断によりインプラント治療が行えます。

 

その際に考慮すべきなのは、運動麻痺などの後遺症です。例えば手指の麻痺が残り、治療後に自身での管理(ブラッシングなど)が難しい場合には、インプラント以外の治療法を検討することも必要です。

 

一方で麻痺により入れ歯の取り外しが難しい、あるいは部分入れ歯を誤って飲み込んでしまうリスクのある方では、インプラント治療を前向きに検討する場合もあります。

 

いずれのケースになるかは、脳梗塞による後遺症の程度や現在の健康状態、患者さんの希望などを考慮しながら、治療の可否を判断していきます。

4-2.抗血栓療法(血液をサラサラにする薬の服用)を受けている方の注意点

過去に脳梗塞や心筋梗塞の経験のある方の中には、「抗血栓療法」という治療を受けている方も少なくありません。

 

抗血栓療法とは血液をサラサラにする薬(ワーファリン・アスピリン・チクロビジンなど)を服薬して、発作の原因となる血栓(血の塊)を予防する治療法のことです。このような薬剤を常時服用している方が外科手術を受ける場合、術中や術後に血が止まらなくなる恐れがあるため、あらかじめ十分な診査が必要となります。

 

抗血栓療法を受けている方の場合、一時的に薬剤を中止してもらうことが通例となっていました。ただ薬剤の中止は脳梗塞や心筋梗塞の再発リスクを高めることから、近年は薬剤を中止せずに処置をおこなうことが推奨されています。

 

ただその際は、「術中・術後の止血の管理を徹底する」「多数本のインプラント手術は避ける」「主治医と口腔外科専門医と連携を図る」といった十分な配慮が必要となります。

 

また手術によって出血量が多くなると予測されるケースでは、主治医の指導のもとで術前・術後に薬剤を中止する場合もあります。

5.持病のある方はまず主治医の相談が必要

以上にご紹介した内容はあくまで一般的な目安に過ぎず、病気の発症状況や現在の健康状態などによっては判断が異なる場合もあるためご注意ください。

 

上記に挙げた病気に限らず、持病のある方がインプラント治療を検討する際は、まず主治医にその旨を伝え、治療ができるかどうかを判断してもらうことが大切です。また歯科医に対しても現在の病状や服用している薬剤の種類、主治医からのアドバイスなどを正確に伝えるようにしましょう。

 

持病がある方のインプラント治療は、治療中・治療後を通してさまざまなリスクがともなうため、主治医と歯科医が情報交換を密にし、互いに連携しながら治療が進められます。ただ治療を受ける側も、自身にどのようなリスクが予想されるのかを主治医または歯科医によく確認し、それらを理解したうえで治療を受けるかどうか検討していきましょう。

6.まとめ

高血圧や心臓病、脳梗塞などの持病をお持ちの方でも、病状が良好にコントロールされているケースではインプラント治療が行えます。これまで持病でインプラントを諦めていた方も、まずは一度、主治医または歯科医に相談してみましょう。

 

ただし持病をお持ちの方の場合は、健康な方よりも治療にリスクが伴いやすいことも事実です。実際にインプラント治療を受ける際は自身に起こりうるリスクをよく理解し、主治医と歯科医の指示に従いながら治療を進めていきましょう。

この記事が気に入ったら「評価」ボタンを押してください!

★★★★★

評価する